雇用調整助成金の対象条件・助成額・申請方法【2026年度】
2026年度の雇用調整助成金について、生産指標・雇用量要件、休業・教育訓練・出向、助成率と日額上限、計画届、残業相殺、申請期限を公式資料に基づいて解説します。
この記事でわかること
- 経済上の理由で事業活動を縮小しても、休業・教育訓練・出向により雇用を維持する事業主を支援する制度です。
- 通常制度では最近3か月の売上高等が前年同期比10%以上低下することなどを確認し、労使協定と計画届に基づいて実施します。
- 中小企業の助成率は原則2/3、2026年7月29日時点の日額上限は1人8,870円で、残業相殺や支給限度日数にも注意が必要です。
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雇用調整助成金を検討できる会社
雇用調整助成金は、景気変動、産業構造の変化、原材料の入手困難や価格高騰などの経済上の理由によって事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員を解雇せず、休業・教育訓練・出向で雇用を維持した場合に利用を検討できる制度です。単に売上が下がった会社へ定額を給付する制度ではありません。
2026年度の通常制度では、雇用保険適用事業主であること、生産指標と雇用量の要件を満たすこと、対象労働者が雇入れ後6か月以上の雇用保険被保険者であること、労使協定に基づいて雇用調整を行うことなどを確認します。
新型コロナ特例の解説記事には、1か月の売上、特例の助成率、特例上限など現在の通常制度と異なる情報が残っています。2026年4月1日以降の取組は、厚生労働省の令和8年4月1日現在版ガイドブックで判断してください。
| 確認項目 | 2026年度通常制度の基準 | 確認資料 |
|---|---|---|
| 事業主 | 雇用保険の適用事業主 | 適用事業所台帳、労働保険関係書類 |
| 事業縮小 | 経済上の理由で事業活動を縮小 | 受注、生産、売上、在庫等の説明資料 |
| 対象労働者 | 雇入れ後6か月以上の雇用保険被保険者 | 資格取得記録、労働者名簿 |
| 雇用維持策 | 休業・教育訓練・出向を労使協定に基づき実施 | 協定書、計画届、実績記録 |
生産指標と雇用量の要件を数値で確認する
生産指標は、最近3か月間の売上高または生産量等の月平均値が前年同期比10%以上低下していることが基準です。直近1か月だけ大きく落ち込んでも、3か月平均で10%に届かなければ、この要件を満たしません。設置後1年未満で前年同期との比較ができない事業所は通常制度の対象外です。
雇用量は、最近3か月間の雇用保険被保険者数と受け入れている派遣労働者数の月平均値を前年同期と比較します。大企業は5%を超え、かつ6人以上、中小企業は10%を超え、かつ4人以上増加していないことが必要です。
| 要件 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 生産指標 | 最近3か月平均が前年同期比10%以上低下 | 同左 |
| 雇用量 | 10%を超え、かつ4人以上増加していない | 5%を超え、かつ6人以上増加していない |
| 休業規模 | 所定労働延日数の1/20以上 | 所定労働延日数の1/15以上 |
| 助成率 | 原則2/3 | 原則1/2 |
売上高は同じ範囲・同じ期間で比較する
店舗や部門を恣意的に除外せず、事業所として継続的に把握している指標を使用します。月次試算表、総勘定元帳、売上帳など、申出書の数値を第三者が追える資料をそろえます。
雇用量は派遣労働者も含めて確認する
自社の雇用保険被保険者だけで判定せず、受入れ派遣労働者を含む月平均値を確認します。前年同期と組織再編等で比較条件が変わる場合は、計画前に労働局へ相談します。
休業・教育訓練・出向の違い
売上が下がった後に何もしなければ助成対象にはなりません。業務を一時的に止める休業、休業日に職業能力を高める教育訓練、別会社で一時的に就業する出向のうち、経営と雇用維持の計画に合う措置を選びます。
同じ判定基礎期間に複数の措置を行うこともありますが、対象日、対象者、賃金・休業手当、訓練内容を区分して記録します。通常の会議、業務指示、営業活動を教育訓練として扱うことはできません。
休業は労働義務を免除し休業手当を支払う
対象となる休業は雇用調整を目的とし、労使協定に基づいて行います。短時間休業は対象労働者が一斉に行う1時間以上の休業など、ガイドブックの単位要件を確認します。
教育訓練は職業上の能力を高める内容にする
カリキュラム、対象者、講師、実施時間、到達目標を事前に定めます。受講レポート等は支給申請時の証拠となるため、出席だけでなく訓練内容と成果を残します。
出向は3か月以上1年以内で復帰を前提とする
出向元と出向先の契約、本人同意、労働条件、賃金負担を事前に整えます。人材交流や経営戦略を主目的とする出向ではなく、雇用調整を目的として出向元へ復帰する計画が必要です。
助成額は休業手当と助成率だけでは決まらない
休業・教育訓練の助成額は、休業手当または賃金に相当する算定額へ助成率を掛けて求めます。中小企業は原則2/3、大企業は原則1/2です。ただし、1人1日当たりの上限があり、2026年7月29日時点では8,870円です。この上限は雇用保険基本手当日額の改定に伴って変わるため、8月1日以降に申請する場合は最新額を確認します。
教育訓練を実施すると当初は1人1日1,200円が加算されます。今回の対象期間で累計支給日数が30日に達した判定基礎期間の次からは、教育訓練実施率が10%未満、10%以上20%未満、20%以上のどれかによって助成率と加算が変わり、20%以上では1,800円加算となります。
支給日数は1年間の対象期間で最大100日、過去の受給歴を含む3年間で最大150日です。会社全体で一律100日分の金額が支給されるのではなく、対象労働者数、休業等延日数、算定額、上限、残業相殺を反映して審査されます。
| 項目 | 中小企業 | 大企業 |
|---|---|---|
| 基本助成率 | 2/3 | 1/2 |
| 日額上限 | 1人8,870円(2026年7月29日時点) | 同左 |
| 当初の教育訓練加算 | 1人1日1,200円 | 同左 |
| 支給限度 | 1年最大100日・3年最大150日 | 同左 |
自社の申請可能性を想定ケースで確認する
中小製造業で、2026年4月から6月の売上高月平均が前年同期より15%低下し、雇用量が増えていないケースを考えます。7月に対象者10人を各5日休業させるなら、対象労働者の加入期間、休業規模、労使協定、計画届、休業手当支払いを順に確認します。
売上低下だけで対象確定とはなりません。雇入れ後6か月未満の従業員を含めていないか、休業等延日数が1/20以上か、別日に残業・休日出勤がないかを確認し、支給対象日数を計算します。
対象になりやすいケース
前年同期比10%以上の生産指標低下があり、既存従業員の雇用を維持するため、実施前に協定と計画を整えて休業手当を支払うケースです。
対象外になりやすいケース
設置1年未満で前年同期比較ができない、対象者が雇入れ後6か月未満、休業日に実質的な業務を行う、計画外の日程で休業するケースは慎重な確認が必要です。
計画届から支給申請までの順序
最初に対象期間と雇用維持策を決め、労働組合等と休業・教育訓練または出向の協定を締結します。その後、必要書類を添えて計画届を提出し、提出した計画に沿って雇用調整を実施します。
休業等は通常、賃金締切期間と同じ判定基礎期間ごとに実績をまとめます。支給申請は各判定基礎期間の末日の翌日から2か月以内です。計画を出して終わりではなく、判定基礎期間ごとに申請期限を登録してください。
実施前に計画届を提出する
計画届には休業日、対象者、協定内容、事業活動の状況などを記載します。日程や人数を変更する場合に変更届が必要か、実施前に管轄労働局へ確認します。
実績を計画と照合する
出勤簿、シフト、賃金台帳、休業手当、訓練レポートを計画日ごとに照合します。計画した休業日に出勤記録や業務メールがあると、事実関係の説明が必要になります。
判定基礎期間ごとに2か月以内で申請する
複数月をまとめて後から申請できるとは限りません。各期間の末日、申請初日、申請末日を一覧化し、給与確定後すぐに証拠書類を点検します。
計画届と支給申請で準備する書類
計画時には休業等実施計画届、事業活動の状況に関する申出書、雇用指標の状況に関する申出書、教育訓練計画一覧表、協定書、事業所や訓練内容の資料などを準備します。
支給申請では支給申請書、助成額算定書、休業・教育訓練実績一覧表、所定外労働等の申出書、支給要件確認申立書に加え、労働日・休日・休業、賃金・休業手当、訓練受講を証明する資料を提出します。
書類名をそろえるだけでは不十分です。計画届、勤怠、賃金台帳、振込額、会計仕訳の対象者・日付・金額を一致させてください。
書類の確認ポイント
- 休業等実施計画(変更)届または出向等実施計画(変更)届
- 事業活動と雇用指標の状況に関する申出書
- 休業・教育訓練・出向の労使協定書
- 出勤簿、シフト、賃金台帳、休業手当の支払記録
- 教育訓練のカリキュラム、出席記録、受講レポート
残業相殺と不支給リスクを確認する
対象期間中に休業させる一方で残業や所定休日労働を行わせた場合、その時間分を休業等延べ日数から差し引く残業相殺があります。部署が違う、急な受注だったという理由だけで相殺対象外になるわけではありません。
架空の休業、勤務実態と異なる出勤簿、訓練を実施していないのに作成したレポートなどは不正受給に該当します。不正が認められると返還、公表、悪質な場合の告発などの措置があります。
見落としやすい注意点
- 生産指標の比較範囲を変えて10%低下に見せた
- 計画していない日を休業実績へ追加した
- 休業日または訓練日に通常業務を行った
- 残業・休日労働を休業等延べ日数から控除していない
- 判定基礎期間末日の翌日から2か月を過ぎた
休業日と残業時間を同じ台帳で集計する
休業一覧と残業一覧を別担当が管理すると相殺を見落としやすくなります。対象期間内の所定外労働と所定休日労働を同じ従業員単位で集計します。
教育訓練中の業務を分離する
訓練時間中に電話対応、受注処理、通常会議を行った時間は、職業能力開発の訓練として説明できません。訓練会場、講師、教材、成果物を残します。
教育訓練を選ぶときの実務ポイント
受注減少期を将来の事業転換に備える期間として使うなら、教育訓練が候補になります。ただし、訓練テーマは労働者の職業上の能力を高める内容である必要があり、経営者だけの研修や一般的な意識啓発では対象外となることがあります。
累計支給日数30日後は教育訓練実施率によって助成率と加算が変わります。休業だけを続けた後に少数の訓練を追加すると、10%未満の区分となり中小企業でも助成率が1/2へ下がる可能性があります。対象期間全体の人日で実施率を試算してください。
| 実施率 | 中小企業助成率 | 大企業助成率 | 1人1日加算 |
|---|---|---|---|
| 10%未満 | 1/2 | 1/4 | 1,200円 |
| 10%以上20%未満 | 2/3 | 1/2 | 1,200円 |
| 20%以上 | 2/3 | 1/2 | 1,800円 |
| 到達前 | 原則2/3 | 原則1/2 | 1,200円 |
他制度との選び分けと併給
一時的な事業縮小で雇用を維持するなら雇用調整助成金、労働者を別企業で新たな経験に就かせて能力向上を図るなら産業雇用安定助成金のスキルアップ支援コースなど、出向の目的によって候補が変わります。
同一の教育訓練または同一の賃金等の支出について、他の助成金を重ねて受給できない場合があります。自治体の支援も含め、対象者、対象日、対象経費を一覧にして労働局へ確認します。
雇用調整助成金のよくある質問
赤字なら利用できるとは限りません。利益の赤字ではなく、最近3か月の売上高等が前年同期比10%以上低下する生産指標など、制度の要件で判断します。
休業手当を支払わない無給休業は、事業主が負担した休業手当を助成する制度の前提と合いません。労働基準法上の休業手当と労使協定の支払率を確認してください。
1か月だけ売上が10%下がれば対象ですか
通常制度は最近3か月の月平均値を前年同期と比較します。1か月だけで判断せず、3か月を同じ指標で集計してください。
休業中に少し仕事をしてもよいですか
労働義務を免除した休業時間に業務を行えば、その時間を休業実績として扱えません。短時間休業の単位や勤怠処理を事前に確認します。
日額8,870円は固定ですか
固定ではありません。雇用保険基本手当日額の最高額に連動して改定されるため、計画時と申請時に厚生労働省の最新表示を確認してください。
申請前チェックリスト
- 最近3か月の売上高等が前年同期比10%以上低下している
- 雇用量が企業規模ごとの増加基準を超えていない
- 対象労働者は雇入れ後6か月以上の雇用保険被保険者である
- 実施前に労使協定と計画届を整える
- 休業手当、勤怠、教育訓練実績を同じ期間で照合できる
- 判定基礎期間末日の翌日から2か月以内を管理する
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公式情報・出典
制度内容や日程は改定される場合があります。申請前に最新版をご確認ください。
