企業のリスキリングに使える助成金・補助金【2026年】
企業が従業員のリスキリングに使える2026年度の支援制度を比較。事業展開等リスキリング支援コース、人への投資促進コース、人材育成支援コースの違い、助成率、対象訓練、申請期限を公式資料に基づいて解説します。
この記事でわかること
- 業務命令で従業員に新しい職務の訓練を行う場合は、まず人材開発支援助成金の3コースを比較します。
- 事業展開等リスキリング支援コースは2026年度末までの時限措置で、中小企業の経費助成率は75%、賃金助成は1人1時間1,000円です。
- 職業訓練実施計画届は訓練開始日の6か月前から1か月前までに提出し、2026年5月14日以降は支給申請時に様式第28号も確認します。
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企業のリスキリングで最初に比較する3コース
企業が従業員へAI、データ分析、クラウド、製造技術、営業変革などの訓練を行う場合、中心になる制度は厚生労働省の人材開発支援助成金です。「リスキリング」という名称だけで制度を決めず、訓練後に担当する職務、受講方法、費用の負担者からコースを選びます。
新規事業、DX・GX、将来担当する職務への転換を伴うなら事業展開等リスキリング支援コース、高度デジタルや定額制研修なら人への投資促進コース、現在の職務に必要な標準的な研修なら人材育成支援コースが主な候補です。
個人が転職を目的に受講する支援、研修会社が提供事業者として受ける補助金、企業が自社従業員の訓練費を申請する助成金は別制度です。誰が申請し、誰を訓練し、訓練後にどの職務へ生かすかを最初に書き分けてください。
| 制度・コース | 向いている訓練 | 最初に確認すること |
|---|---|---|
| 事業展開等リスキリング支援コース | 新規事業、DX・GX、将来の職務に必要なOFF-JT | 事業展開または人事・人材育成計画との関係 |
| 人への投資促進コース | 高度デジタル、成長分野、IT実習、定額制研修 | 訓練メニューと対象レベル |
| 人材育成支援コース | 現在の職務に直接関係する10時間以上のOFF-JT等 | 雇用区分、訓練時間、OJTの有無 |
| 自治体独自の支援 | 地域の重点分野や中小企業向け研修 | 所在地、募集期間、国制度との併給 |
事業展開等リスキリング支援コースの対象
事業展開等リスキリング支援コースは、事業展開、DX・GX化、または企業内の人事・人材育成計画に基づいて今後従事することが予定される職務に必要な知識・技能を習得させるOFF-JTを支援します。2026年3月2日の改正後は、具体的な新規事業だけでなく、人事・人材育成計画に基づく将来職務の訓練も対象候補になりました。
申請事業主は雇用保険適用事業所の事業主、受講者はその事業所の雇用保険被保険者であることが基本です。経営者本人や役員だけが受講する講座、雇用保険被保険者でない外注先の研修は、このコースの対象とは整理できません。
制度は2026年度末までの時限措置と案内されています。年度末までに契約すればよいとは限らず、計画届、訓練実施、支給申請の時期を最新パンフレットで確認する必要があります。
新規事業・DX・GXに伴う訓練
新しい製品・サービス、業務プロセスのデジタル化、脱炭素に向けた職務変更など、経営上の取組と訓練内容を対応させます。単に流行の講座を受講するだけではなく、受講後の担当業務まで示します。
人事・人材育成計画に基づく将来職務の訓練
将来必要になる職務能力を人事・人材育成計画へ位置付け、その計画と対象労働者、研修カリキュラムを結び付けます。社内で期待する役割や配置の説明が曖昧だと、訓練の必要性を示しにくくなります。
経営者本人・個人の転職支援とは分ける
この助成金は、事業主が雇用する被保険者への訓練を支援する制度です。個人の転職支援や教育訓練給付、研修提供事業者向けの補助事業とは申請主体と要件が異なります。
2026年度の助成率・賃金助成・上限
事業展開等リスキリング支援コースの通常分は、中小企業の経費助成率75%、賃金助成は受講者1人1時間当たり1,000円です。大企業は経費助成率60%、賃金助成500円です。助成額は実際に支払った対象経費、受講時間、1人当たり限度額などで計算されるため、研修費の75%が無条件で支給されるわけではありません。
1事業所が1年度に受給できる上限は1億円です。1労働者が助成対象として受講できる回数は1年度3回までで、賃金助成の限度時間もあります。定額制サービスは、他コースの定額制訓練との重複期間や回数を含めて確認します。
訓練費をいったん全額支払い、審査後に助成を受ける仕組みです。研修会社への支払日と助成金の入金日は離れるため、助成予定額を差し引かず、総額を支払える資金計画を作ります。
| 区分 | 経費助成 | 賃金助成 |
|---|---|---|
| 中小企業 | 対象経費の75% | 1人1時間1,000円 |
| 大企業 | 対象経費の60% | 1人1時間500円 |
| 1事業所の年度上限 | 経費・賃金等を合わせ1億円 | 同じ上限に含む |
| 受講回数上限 | 1労働者1年度3回まで | 同じ訓練回数で管理 |
対象になる訓練と対象外になりやすい研修
対象となる中心は、職務に必要な知識・技能を習得する10時間以上のOFF-JTです。研修名ではなく、カリキュラム、講師、実施方法、実訓練時間、受講後の職務を資料で確認します。
一般的な意識啓発、交流会、商品説明、通常業務の打合せ、趣味・教養、福利厚生目的の講座は対象外になりやすい内容です。DX概論だけで具体的な操作・分析・設計技能を習得しない研修も、リスキリングの必要性を説明しにくくなります。
AI研修は受講後の業務まで具体化する
生成AIの基礎知識だけで終わらせず、社内データの分析、業務フローの設計、プロンプト・評価方法、情報管理など、受講者が担当する業務と学習項目を対応させます。
eラーニングは受講履歴を残す
eラーニングや通信制訓練では、本人のログイン、学習時間、進捗、修了を確認できる記録が必要です。動画URLを配っただけでは、誰がどこまで受講したかを証明できません。
OJTだけではこのコースの中心要件を満たさない
日常業務の中で先輩が教えるOJTだけではなく、業務から離れて計画的に行うOFF-JTを組み込みます。OJTを含む別メニューを使う場合は、対象コースを選び直してください。
申請は訓練開始日の1か月前までに終える
職業訓練実施計画届は、訓練開始日から起算して6か月前から1か月前までの間に、管轄労働局またはハローワークへ提出します。研修を申し込んだ日ではなく、計画届の受理と訓練開始日の順序を管理してください。
申請の前提として、職業能力開発推進者の選任と事業内職業能力開発計画の策定・従業員への周知が必要です。訓練終了後は、原則として終了日の翌日から2か月以内に支給申請します。
2026年5月14日以降に提出した計画に基づく支給申請では、受講料等の価格設定に関する疎明書である様式第28号が必要と案内されています。電子申請画面の対応状況も申請時点で確認してください。
| 時期 | 行うこと | 期限管理 |
|---|---|---|
| 訓練設計前 | 推進者を選任し、事業内計画を策定・周知 | 計画届提出まで |
| 訓練前 | 職業訓練実施計画届とカリキュラムを提出 | 開始日の6か月前から1か月前 |
| 訓練中 | 出席、学習時間、賃金、変更内容を記録 | 変更は所定の変更届 |
| 訓練後 | 支給申請書と証拠書類を提出 | 原則、終了日の翌日から2か月以内 |
リスキリング計画に書くべき内容
計画には、経営課題、将来の事業・職務、現在不足している能力、訓練内容、受講者、受講後の配置・業務を一続きで書きます。「DX人材を育成する」だけでは、なぜその講座と受講者が必要かを判断できません。
研修会社の提案書をそのまま使わず、自社の職務名、担当業務、利用するシステム、期待する成果へ置き換えます。複数の講座を受ける場合は、基礎、実践、社内展開の順序も整理します。
課題と訓練を1対1で対応させる
営業データを分析できない課題なら、表計算の一般講座ではなく、データ抽出、分析、可視化、提案への活用までを学ぶカリキュラムが対応します。
受講後の職務と評価方法を決める
研修修了をゴールにせず、担当業務、成果物、評価時期を決めます。助成金申請だけでなく、研修投資の効果確認にも使える記録になります。
研修形式別の確認ポイント
集合研修、オンライン研修、定額制サービス、大学・専門学校、社内講師による研修では、対象経費と残す証拠が異なります。受講料だけでなく、教材費、会場費、講師謝金、システム利用料がどの区分に入るかを確認します。
定額制サービスは契約しただけではなく、対象労働者が実際に受講し、修了要件を満たした記録が必要です。社内研修は講師の職務・経験、カリキュラム、実施時間、通常業務と分離した訓練であることを示します。
外部集合研修
受講案内、カリキュラム、請求書、領収書、出席記録、修了証をそろえます。旅費・宿泊費は訓練受講料と同じ扱いとは限りません。
定額制・サブスクリプション研修
契約期間、対象ID、受講履歴、修了講座を保存します。他コースの定額制訓練と利用期間が重複する場合は、対象範囲を労働局へ確認します。
社内講師・事業内訓練
通常の会議や業務指示と区別し、訓練日時、場所、講師、教材、受講者、実訓練時間を記録します。講師謝金や会場費の対象可否も確認します。
リスキリングで準備する証拠書類
職業訓練実施計画届、事業展開または人事・人材育成計画、対象者一覧、雇用保険の確認資料、訓練カリキュラム、受講料の見積・契約・請求・支払資料を準備します。
実施後は、出席簿、受講ログ、修了証、賃金台帳、出勤簿、訓練日の賃金支払いを確認できる資料を保存します。申請書の数字だけでなく、研修会社、給与担当、人事担当の記録が一致していることが重要です。
書類の確認ポイント
- 職業能力開発推進者の選任記録
- 事業内職業能力開発計画と周知記録
- 職業訓練実施計画届と提出控え
- カリキュラム、講師、実訓練時間が分かる資料
- 契約書、見積書、請求書、振込記録
- 出席簿・受講ログ・修了証・賃金台帳
- 2026年5月14日改正に対応する様式第28号
制度を間違えやすい3つのケース
1つ目は、個人の転職支援制度を自社従業員の研修費に使えると考えるケースです。申請主体が研修提供事業者や個人の制度は、企業が直接受給する人材開発支援助成金とは分けます。
2つ目は、研修とシステム導入費をすべて同じ助成金へ入れるケースです。人材開発支援助成金は訓練経費が中心で、ソフトウェア・機器の購入は別制度を検討します。2026年の改正で設けられた設備投資加算も、対象要件と限度額を個別に確認してください。
3つ目は、受講開始後に助成金を知って計画届を出すケースです。開始日の1か月前までという提出期限に間に合わなければ、同じ訓練を後から対象にはできません。
自治体補助金と国の助成金を併用するとき
都道府県や市区町村がDX・人材育成の独自補助金を募集する場合があります。国の人材開発支援助成金と同じ受講料を重複して申請できるとは限りません。
所在地、企業規模、対象分野、申請期限に加え、他の補助・助成を受ける経費の扱いを公募要領で確認します。同じ研修でも、対象者や経費を明確に分けられるか、双方の窓口へ制度名を伝えて確認してください。
企業向けリスキリング助成金のよくある質問
リスキリングという名前の研修なら自動的に対象になるわけではありません。職務との関連、対象労働者、訓練時間、OFF-JT、計画提出、費用負担などを満たす必要があります。
支給額は研修会社の見積だけでは確定しません。経費助成率、1人当たり限度額、賃金助成時間、年度上限を適用して審査されます。
生成AIのオンライン講座は対象ですか
対象候補ですが、職務との関係、10時間以上のOFF-JT、受講ログ、計画提出などを確認します。概論だけで具体的な技能習得がない講座は、対象性を説明しにくくなります。
経営者本人の受講費は対象ですか
事業主が雇用する雇用保険被保険者への訓練が基本です。経営者・役員本人だけの研修費は、この助成金の対象として見込まないでください。
研修費は助成分を引いて支払えますか
原則として事業主が対象経費を支給申請までに負担します。助成金は審査後の支給なので、まず総額を支払える資金を用意します。
申請前チェックリスト
- 申請主体が企業で、受講者が雇用保険被保険者である
- 訓練後に担当する職務とカリキュラムを対応させた
- 事業展開・人への投資・人材育成の3コースを比較した
- 訓練開始日の6か月前から1か月前までに計画届を出せる
- 10時間以上のOFF-JTと受講記録を確認した
- 2026年5月14日改正の様式第28号を確認した
- 助成金入金前に研修費を支払える資金を用意した
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